教育学研究科は,教育の領域で,教育現場と社会,人間に関わる多様な事象を対象とした諸科学を探究することにより,学校リーダーおよび地域社会に貢献できる高度な教育的実践力をもつ人材の育成のために,専門職学位課程,修士課程では,以下に示す方針でカリキュラムを編成し,実施しています。
<専門職学位課程>
・理念・総論
専門職学位課程は,ディプロマ・ポリシーに示す教員としての職能成長のため,学部学生または教師としての多様な学修経験を通して培った資質能力に加えて,アクション・リサーチャーとしての教師に求められる教育実践を学ぶことができるよう学校現場や教育行政との密接な連携のもと,デマンドサイドのニーズに立脚し,研究成果を学校現場に直接還元できる特色あるカリキュラムを編成しています。
地域や学校において指導的役割を果たす教員として必要な資質・能力として,①分析力・解釈力,②企画力・提案力,③実践的展開力,④評価力,⑤マネジメント力を構想し,育成することを目指しています。
専門職学位課程では,理論と実践の高度な架橋・往還・融合を通じて,教職生活全体を通じて継続的に職能発達する高度専門職業人としての教員の育成を目指しています。
・教育内容
コースワークでは,すべての学生が履修する共通科目を5領域及び岡山大学の独自科目で設定しており,教育課程の編成・実施に関する領域4科目(「教育課程編成の実践と課題A・B」,「特色あるカリキュラムの開発A・B」),教科等の実践的な指導方法に関する領域4科目(「教材開発と授業デザインA・B」,「授業の指導計画と学習開発A・B」),生徒指導・教育相談に関する領域4科目(「生徒指導と学校カウンセリングの実践と課題A・B」,「特別支援教育の実践と課題A・B」),学級・学校経営に関する領域4科目(「学級・学年・学校経営の実践と課題A・B」,「学校保健・学校安全とリスクマネジメントA・B」),学校経営と教員の在り方に関する領域4科目(「学校教育の役割と教員の職能開発A・B」,「学校とコミュニティA・B」)と岡大独自の科目である教育実践研究に取り組むために必要な研究方法を習得する教育実践研究に関する領域4科目「教育実践研究の方法ⅠA・ⅠB」,「教育実践研究の方法ⅡA・ⅡB,」を履修します。これらの学修により,今日的教育課題や教育事象について仕組みや成り立ちを身に付けます。選択科目は,キャリア段階に応じた職能発達を促し,なおかつ今日的課題に対応できる科目群(教育課程・授業力育成,生徒指導・学級経営,特別支援,今日的学力に対応,学校経営・学校組織開発)と教育実践研究を設定しています。履修は学生の学びの段階・深化を第一に教務担当教員および指導教員の指導のもと,2年間で計画します。これらの科目と学校における実習科目によりアクション・リサーチャーとしての力量を涵養します。
・方法・学修過程
講義・演習での学びと実習における学びを必修科目の「教育実践研究」等において強く関連付けることを通じて,理論と実践の高度な往還を図ります。
学校における実習においては,職能成長の段階等に応じて,課題の発見→解決→探究,問題の分析→解決策の提案といった取り組みをカリキュラムに明確に位置付け,段階的に学修します。
開講科目の多くで,校種や教科,これまでの経験,そして職能発達段階の異なる学部新卒院生と現職教員院生とが同じ授業を履修します。「共に学ぶ」ことを通じて,教育事象を多様な視点からみる見方や考え方を共有し,課題の解決に向け展開される実践に参画していく資質・能力を「共に高め」ています。
実習期間中に毎日実施される省察会,教育実践研究において定期的に実施される省察会や報告会の計画及び運営など,能動的な学習を促進する機会を設けています。実習期間中の省察会には,実習校の教員(管理職,教務主任,学級担任,教科担当教員,養護教諭など),教育実践研究における省察会や報告会では,大学の教員(指導教員,専修所属の教員など)及び教育行政の関係者(岡山県教育委員会、岡山県内の市町村教育委員会、実習校及び勤務校の教員など)が参加することで,大学だけでなく学校現場や教育行政からの助言を得たり,質疑応答を重ねたりする中で,デマンドサイドのニーズを把握したり,研究成果を学校現場に直接還元できる力量を高めたりします。
・学習成果の評価
講義科目では主に総括的評価,実習・演習科目では主に形成的評価を行います。アクション・リサーチャーとしての基幹的な資質・能力の修得状況について,学部新卒院生と現職教員院生に共通でA+・A・B・C・F評価で実施し,到達目標の概ね達成の基準Cを設定しています。各科目の評価方法はシラバス等により履修者に示します。
・FDなど
教育課程の編成及び実施の理念と実際について,カリキュラムマップを作成し,多様な媒体を通じて公表することにより,在籍する大学院生,教職員だけでなく,専門職学位課程を受験する大学生に対しても周知を図っています。また,担当教員に対しては,年度当初,実習期間の前後,シラバス作成の時期等定期的に教育課程編成の理念を理解したり,各科目の位置付けや教員の果たす役割について検討したりする機会を設け,不断の改善をおこなっています。
<修士課程>
・理念・総論
修士課程は,ディプロマ・ポリシーに示す高度な教育実践力を身に付け社会に貢献するために,グローバル化や地域の高齢化,環境問題等,社会に存在する課題に対応できる高度な課題解決能力を有し,高度な教育に関する専門知識が求められる教育関係の職場でも活躍できる実践人を養成するための特色のあるカリキュラムを編成しています。
教育に関する様々な事象を教育科学として開拓的に広く捉え,そこに見いだされる課題を実証的・体系的に教育研究し,教育科学の発展に資するとともに,その成果を広く国内外の社会や教育現場に還元できる豊かな学識と高度な課題解決能力を備えた人材を養成することを目指しています。
・教育内容
コースワークでは,1年次に学生同士が協働して課題解決に取り組むプロジェクト基盤学修(Project Based Learning:PBL)と,2年間の学修期間で専門性を深く探究する修士論文研究の二本柱で構成されています。その土台となるよう,授業は共通基礎科目(教育哲学・変遷等の教育の基盤とPBLをチームで遂行するための考え方と技術を学びます。),専門基礎科目(PBLに関する事項,教育科学に必要な基礎的知識や国内外の事例,発達支援関係の基礎を学びます。),専門科目(修士論文研究に関する専門領域の研究方法や分析法,その他関連する多様な専門領域を学びます。)から構成されています。これらの授業では,ICTを効果的に活用しながら,講義やアクティブ・ラーニングを用いた演習と学期毎の評価によって,批判的思考力や創造性,課題解決能力の育成と伸長を図ります。
PBLでは課題解決型学習を通して,専門性の異なる他者と協働する価値を理解し,教育を熟知した社会人や研究者として活躍するための実践的視野と行動力を育みます。
・方法・学修過程
教育に関する人文・社会・自然科学的な事象を教育科学として開拓的に広く捉え,個人や社会に直面する様々な事象について実証的・体系的に研究し,そこに見出される課題を解決するとともに,その成果を教育現場や広く社会にアウトプットすることができるよう学修プロセスを設定しています。
開講科目の多くでは,同一の授業内容を複数の教員が同時に担当する協働(チームティーチング)の形式を設定しています。オムニバスによる授業は,一つの現象を多角的・多面的に捉える視点を提示できる方法であり,学生それぞれの観点から個別課題を把握・設定し,その総合的な理解や適切な解決に向けた考察を促す意図で実施しています。協働による授業は,様々な問題の根底にある本質的な課題を発見・分析する上で有効な授業であり,学生が教員と直接的・対話的に関わりながら,その課題解決において実施しています。
PBLは,学生が主体的に社会に存在する課題を見出してその解決を目指す営みを,協働を通じて学修します。教育科学の知識や方法を修得し,実践的課題に応用して課題の解決に取り組むことができるように,①教育科学やチームプロジェクトに取り組むために必要な基礎的理論を修得する。②修得した理論をふまえ主体的に課題を設定して教育科学プロジェクトを遂行する力を修得する。③現代的教育課題に関わる課題に取り組むため,最新の研究成果や社会情勢を理解する。④学校と学校外との連携が重要となるこれからの時代を見据え,修得した理論や手法を社会の課題解決のために応用できる。以上の①~④を目的としています。学修過程での学生およびチームの変容を把握し,中間発表会・最終発表会でその到達度を総括的に把握し,能動的な学修を促進する機会を設けています。
・学習成果の評価
講義科目では主に総括的評価を,演習科目では主に形成的評価を重視します。評価はA+・A・B・C・F評価で実施し,到達目標の概ね達成の基準Cを設定しています。各科目の 評価方法はシラバス等により履修者に示します。
PBLは,学修過程での変容を形成的に評価するとともに,中間発表会・最終発表会でその到達度を総括的に評価します。
学位論文の審査は,まず教育科学構想発表会(中間発表会)を2年目に開催し,研究の進捗状況への指導・評価を行った上で,論文審査と発表会(最終試験)により,専門的知見の深化と課題解決能力,総合的実践力に対する最終的な総括評価を行います。
・FDなど
教育課程の編成及び実施の理念と実際について,カリキュラムマップを作成し,多様な媒体を通じて公表することにより,在籍する大学院生,教職員だけでなく,修士課程を受験する大学生に対しても周知を図っています。また,国内外を問わずSDGsなど教育科学に関する実践家,専門家を招いた講演やフォーラムを企画し,新しい知見を得るだけでなく意見交換の場としても活用しています。さらに,担当教員に対しては,年度当初,PBL編成,シラバス作成の時期等定期的に教育課程編成やプロジェクトの理念を理解したり,各科目の位置付けや教員の果たす役割について検討したりする機会を設け,不断の改善をおこなっています。また,関係企業や機関から修士課程への要望を集約し教育に活かすとともに地域との連携を強化しています。