吸い付き蟻桟の加工について
 面積の大きな板材は反り止めを入れる必要があります。かといって,板材の伸縮を無視してビスや接着剤で固定してしまっては,割れやストレスをため込むことになります。
 したがってテーブルの甲版や扉などは裏面には蟻桟を組み付けて,伸縮を逃がしつつ反りを止める工夫がされています。ただ経年変化で板と桟木の締まり具合は変化してきますので,場合によると数年後にはスカスカで効き目ナシという事態も起こります。
 そこで蟻形で組むだけでなく,桟木にテーパーを付けて締まり勾配を併用することでさらに効果を持続することができます。
 しかしながらこの加工はシビアな精度が求められるため,木工のステップアップを目指す一つの壁であることも確かです。
 今回すっきりとしたフォーマット(定型)を作りたいと思い,加工方法を考えてみました。備忘録として記録しておきますが,考え方と手順を単純にしてあるため,桟木の幅や使用するビットの条件によっては工夫が必要です。
        ポイントは ・締まり勾配のテーパー定規を1つだけ作り,オン・メン双方に利用すること。
                ・溝を切る定規(加工材上のガイド)は片側だけにし,セットしたら動かさないこと。
1 加工材と桟木。今回,桟の左(内)側を90°右(外)側をテーパーにしました。 2 テーパー定規にする板を,予定するアリのサイズにだいたい幅を合わせる。 3 手押し鉋でテーパーに削る。2〜3/1000程度の傾斜が一般的。 4 狭い側。今回は幅が小さいので差は約1mm
5 広い側 6 使用するビットの刃幅を計り・・・ 7 丸鋸でビット刃幅分を取り除く。 8 必要なのは残りの薄い方
薄いとテーパー削りが危険なため(2)の幅にしていました。

9 テーパー側を間違わない様ブルーにしました。薄い板を定規として使用します。 10 予定位置をマーク。正確に合わせる場合,右手側のアリ位置を正確にケガく。 11 アリの右手に合わせてガイド板の位置を決める。 12 左(内)側を直角に固定する。
13 クランプで固定 14 溝の外側を先に削るため,テーパー定規を両面テープで固定。最後を参照 15 今回はアリビットで直接切りました。 16 テーパー定規を取り,内側を切る。これで溝は完成。(6)〜(8)の意味はここにあります。
17 この様な深さ定規を作っておくと便利です。 18 ルーターテーブルの刃を溝の深さに合わせる 19 桟の90°側。フェンスを使い普通にアリを切ります。    20 桟の片側ができました。
21 テーパー側へ定規を両面テープで固定。 20 この定規をフェンスへ当て,予定位置より大きめに削ります。溝へ合わせながらフェンスを調節。 21 頭が入る様になったら微妙な調節が必要。 22 フェンスの外側に線を引き,コンマ数ミリずつ削って入り具合を確かめます。
23 フェンスを軽く叩いて調節0.5mm線の半分移動。 24 入り始めました。調節を繰り返します。 25 手で6-7割入る様になれば判断のしどころ。今回はたまたま硬いタモの集成へ柔いマツの桟を打ち込んだので,削りは止め。本番なら材が逆ですね。
27 ゲンノウで打ち込んで,ガッチリ効きました。 28 最初の90°側を少々遠慮して削ったためセンターからずれてしまいました(¨;)   テーパー定規の理屈は理解して頂けたでしょうか?。
◆加工材へ固定したルーターのガイドは最後まで動かしていません。
◆桟側の削りシロを調節してかみ合わせを調節しました。
◆(14)-(15)で正確に位置決めをしていれば(28)の様な失  敗は起こりません。
(13)から削るか,(14)から削るかは,2度目の切削がUPカットになるか,DOWNカットになるかの違いです。
 どんな刃物でも,手送りで削る場合,必ずUPで削ります。DOWNカットは刃が噛み付いて走るため制御できません。