研究内容



  日本付近は夏、冬ともに、大規模な海陸コントラストや海面水温のコントラストによって駆動されるモンスーンシステムの接点として、それらの影響を特に顕著に受ける地域の1つです。日本付近は年間を通じて平均雲量の大きなベルトとなっていますが(前線帯)、そこでの降水の特徴は、モンスーンの関わり方の季節的変遷に伴って、季節的にも大きく変化します。更に、それらの「季節的特徴」が年々で大きな違いも見せるわけです。このような気候環境にある東アジア等をターゲットとして、例えば、次のような研究を行っています。


1. 梅雨や秋雨の仕組み・マルチスケール水循環と変動機構
(東アジアの降水環境と異常気象)
2. 大気陸面、大気海洋相互作用と東アジアの水循環
(説明は、次項以降を参照)



  SSM/Iデータに基づく5日降水量分布。冷夏年であった1993年の6月30日〜 7月4日の例では、東シナ海〜西日本の梅雨前線で、海上も含めて、広範囲で総降水量 200mmを超えるベルトが持続した。
  その南方地方の少雨域とのコントラストも著しい。



  長崎市における1951年〜1980年で平均した月降水量の季節変化(加藤,1998)。(30年平均値)±(月降水量標準偏差)も併せて示した。 西日本では4〜9月頃の暖候期には平均的にも月降水量が多く、特に梅雨期の6,7月 には大変多い。
  しかも興味深いことに、6〜9月の梅雨・盛夏・秋雨期 の降水量の年々変動も大変大きい。
  このような大きなアノマリーがどうして起きるのか、 また、季節を越えてどのようにふるまうのか等も、注目しているポイントです。






梅雨や秋雨の仕組み・マルチスケール水循環 と変動機構(東アジアの降水環境と異常気象)


  地球温暖化等のグローバルスケールの環境変化に対する、地域規模のエネルギー・水循環の応答過程として、我々の生活にも直結した、冷夏、豪雨の頻出、猛暑、渇水等の異常気象が起こります。ここでは、日本付近の四季折々の現象を中心に、地球規模の変動に対する地域規模の現象応答過程の理解を常に意識しながら研究を進めています。

  具体的には、(a)梅雨や秋雨がなぜ起きるのか、(b)それらの年々の変動と東アジアの異常気象に対して、アジアモンスーンやエルニーニョ等がどう関連しているのか、(c)広域の地表面大気間の熱・水の交換過程の変動やメソ降水系の振舞が、前線帯全体での降水活動とどのように相互作用しながら、前線帯全体での雨の分布が変動するのか、等を切り口に研究しています。言いかえれば、「地球温暖化が進むと日本や中国の梅雨・秋雨はどうなるのか」、等の問いに的確に解答できるようになるための基礎を様々な視点で研究しているわけです。









大気陸面・大気海洋相互作用と東アジアの水循環


  東アジアは、中国の砂漠と湿潤地、暖流と寒流等、地球表面の状況が大きく異なる地域が隣接しています。東アジア特有の気候・水循環システムの仕掛けやその変動に果たす陸面・海面の役割について、夏の中国大陸上や冬の寒気吹き出し時などをターゲットの1つとして研究しています。
  特に冬の日本海は、大陸から吹き出してくる大変冷たい空気が暖かい海上で多量の熱や水蒸気の補給を受けながら変質され地上数kmの厚さを持つ対流混合層内で水蒸気・雲水・雪水を効果的に大気中に貯め込みながら、風下側の日本列島へ輸送されることによって日本列島の日本海側での多量の雪がもたらされます。

  しかし、近年の地球環境変動によって、例えば日本海側の降雪量も大きく変化しつつありますが、それがどの様なプロセスの変化によるものなのか、それを予測するにはどの様な基礎過程を把握・理解せねばならないのか等、日々の降雪システムの動気候学的特徴が年々どう変動しているのかにも注目して研究を行っています。なお、国際共同研究「アジアモンスーンエネルギー水循環観測研究計画(GAME)」の中の中国淮河流域で1998年、1999年に行われた特別観測にも参加し、梅雨前線に関するそのデータ解析も進めています。また、2001年12月より開始された、科学技術振興事業団(JST)の行う戦略的研究事業(CREST)の研究領域「水循環のモデリングと利用システム」における、「湿潤・乾燥大気層の降水システムに与える影響の解明と降水予測精度の向上」(研究代表者:中村健治、名古屋大学地球水循環センター教授)のメンバーとして、広域水循環と陵面の役割に関連した解析を分担し、現地観測グループの成果と絶えずフィードバックし合いながら、中国の梅雨前線とその北西方の乾燥域、暖候期の南西諸島域等をターゲットに研究を進めています。




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