喜多研究室で開発した教材/調査研究に関する最近の論文とその要旨(鳴門教育大学・岡山大学教育学部における研究)

48)"環境浄化をめざした教材開発と中学理科・高校化学への導入”,化学と教育, 47, pp.416-419(平成11年6月) (玉井広志、川端康夫の修論を投稿したもの)

酸化チタンを光触媒とする重金属イオンの回収と家庭排水中の洗剤の光分解を高校ならびに中学校の環境教育教材として開発した。安価で、安全な方法で、環境への汚染物質を除去できた。

51)”河川の自浄作用に関する研究とその教材化“,化学と教育,49,pp.364-366(平成13年6月) (冨田敬子の修論を投稿したもの)

実験室で河川の浅瀬の河川堆積物に付着した好気性微生物による河川水の中の有機汚濁物質の分解反応(河川の自浄作用)を再現できる河川モデル(塩ビ製樋を用い,水流ポンプで川の流れを再現した)を作成し,徳島県吉野川中流域とその支流である穴吹川の自浄作用について明らかにした。

54) “一酸化窒素による酸素の定量法に関する研究”,化学と教育,50, pp. 526-529(平成14年7月) (渡辺敏夫の修論を投稿したもの)

一酸化窒素と酸素が反応して二酸化窒素になる。これを水に溶解させ,気体部分の体積変化から試料気体中の酸素量を精度良く測定する方法を開発した。リン酸緩衝溶液を用いると特に精度良く酸素量を決定することができる。

55) “河川の自浄作用の通年測定と浄化能の強化に関する研究-愛媛県小田川を例にー”,化学と教育,51, pp. 190-192(平成15年3月) (三好美恵の修論を投稿したもの)

我々の河川モデルを用い,水温の効果を検討した後,愛媛県小田川で1年間毎月河川堆積物を採取し,それら堆積物による河川の自浄作用を決定した。実際の河川では,水温と降水量(梅雨や台風の影響)が,河川の自浄作用を決定していることを明らかにした。

56)“吉野川汽水域における河床堆積物による自浄作用−塩分濃度と自浄作用の関係−",化学と教育,51, pp. 686-689(平成15年11月) (津村美帆の卒研を投稿したもの)

河川モデルを用い,徳島県吉野川第十堰より上流(淡水)と下流(汽水)で,河川の自浄作用がどのように変化するかを調査し,淡水で自浄作用を担っている微生物と汽水で自浄作用を担っている微生物の種類が異なるか,もしくは塩分濃度により有機物の分解効率の異なる微生物が生活していることを明らかにした。

57) “パソコンセンサーを用いた化学教材の開発ー無機化合物(金属塩)の溶解熱“,化学と教育,52, pp. 328-331(平成16年5月) (那須悦代の修論を投稿したもの)

パソコンを用い,温度センサーにより種々の金属塩の溶解熱を測定し,イオン結晶の格子エネルギーを求めたり,水和イオンの構造を議論した。またこれまではかられていなかったランタノイド塩の溶解熱を測定し,ランタノイドイオンの水和構造を溶解熱から議論した。

58)“再生紙を利用した鉄(II)試験紙の作成とこれを用いた簡易分析法によるカンボジアの地下水の鉄(II)イオン量に関する調査研究”,化学と教育,52, pp. 404-407(平成16年12月) (ヘインメインの博士論文を投稿したもの)

牛乳パックから再生紙を作り,これにフェナントロリンをしみこませ,鉄(II)試験紙を作成し,これをカンボジア国内の210カ所の井戸水の鉄(II)イオン量を調査し,WHOが決めた基準値よりも濃度の高い井戸水が飲料されていることを明らかにした。

59)“汽水中の微生物による河川の自浄作用−徳島県吉野川汽水域を例として−",化学と教育,52, pp.842-843(平成16年12月) (マリアクラウデットカルバンの研究を投稿したもの)

河川の下流域における自浄作用を検討するため,汽水のみを用いた自浄作用と河床堆積物にイオン交換水を用いた自浄作用を測定し比較することにより,河口付近では主に汽水中の微生物により自浄作用が行われていることを明らかにした。

60)”パソコンセンサーを利用した化学教材の開発(2)ー電気分解と電極の前処理”,化学と教育、53、pp.102-105(平成17年2月)(那須悦代、ドラミニシフォウンランラの修論を投稿したもの)

銅板とステンレス板を用い,乾電池により銅メッキをし,ファラディ定数を求める最適条件の追求とその際の電極の前処理の化学的意味を電流センサー、電圧センサーを用いて追求した.

61) “Quantitative Analysis of Chloride in Brackish Water: An Application to the Hyperchromic Effect of Copper(II) Ion with Chloride Ion”,Analytical Sciences, 21, pp.95-99(平成17年3月)(ヘインメインの博士論文を投稿したもの)

銅(II)アコイオンの800 nm付近の吸収スペクトルのピークの強度が塩化物イオン濃度に対応して増加する現象を利用し,環境水中の塩化物イオン量を決定した.実際に環境水を扱う場合は妨害イオンの制御などを行う必要があり, これらについても検討した.

62)“1950年から2002年までの小学校理科における「水溶液の性質」の単元に関する教科書の記述の変遷”,化学と教育,53, pp.159-162(平成17年3月) (那須悦代の修論を投稿したもの)

戦後より現在までの小学校理科の教科書を「水溶液の性質」についての単元について文字数と図・写真のページに占める割合,扱っている内容を調査し,指導要領の改訂に伴い教科書がどのように変遷してきたかを明らかにした。

63)“硫酸銅(II)水溶液とハロゲン化物イオンとの反応”,化学と教育,53, pp.163-166(平成17年3月) (ヘインメインの博士論文を投稿したもの)

硫酸銅水溶液にフッ化ナトリウム,塩化ナトリウム、臭化ナトリウム,ヨウ化ナトリウムの水溶液をそれぞれ加えるとハロゲン化物イオン濃度に応じて特徴的な化学変化をすることを明らかにし,その応用を検討した

64)“小学校理科教科書における「環境」の取り扱いに関する調査”,化学と教育,53, pp.402-403(平成17年7月) (紅露瑞代の修論を投稿したもの)

戦後の小学校理科教科書において「環境」がどのように扱われてきたかを調査し,現行の教科書で強調されている環境教育を理科でどう扱っていくべきかを議論した.

65)“銅山跡に隣接する河川の自浄作用に関する調査研究-徳島県吉野川市美郷の河川を事例として”,化学と教育,53, pp.630-632(平成17年11月)(栗田寛子の卒研を投稿したもの)

銅鉱山跡を上流に持ち、河床が青緑色をしている東山谷川と、それに合流しホタルが生息する清流川田川について対照的な河川の堆積物を用いて河川の自浄作用を比較し,銅イオンが河川の微生物に与える影響を明らかにした.

66)“パソコンセンサーを利用した化学教材の開発(3)-ブレンステッドの定義による中和熱とヘスの法則−”,化学と教育,53, pp.639-640(平成17年11月) (那須悦代の修論を投稿したもの)

高校化学の教科書で扱われている中和についての定義を調査,比較し、弱酸、弱塩基の中和熱に関しても扱うことによりヘスの法則と化学平衡について深い学習を可能とする教材を開発した.

67) ”アミノ酸しょうゆを題材としたカンボジアの高校における授業実践”,化学と教育,53,pp.698-701(平成17年12月)(紅露瑞代の修論の一部を投稿したもの)

生活単元学習の時期に扱われていたアミノ酸しょうゆ作りの教材を再発見し,教材研究を行い,カンボジアの高校で研究授業を実践し,教材の有効性を検討した.

68)”マーブリングインク法による洗剤の定量とフィリピンの高校における実践”,化学と教育,53,pp.720-721(平成17年12月)(三好美恵の実践を投稿したもの)

墨絵用のマーブリングインクを試料水上にたらし,その広がりを画用紙に写し取り,面積をはかることにより,試料水中の洗剤量を推定できる原理をもとに教材開発を行い,フィリピンの高校で授業実践し,有効性を検討した.

69)”中学校理科教科書における「環境」の取り扱いにかんする調査”,化学と教育,54,pp.614-615(平成18年10月)(紅露瑞代の修論の一部を投稿したもの)

中学校理科教科書で環境問題や自然環境にかんする事項がどのように取り扱われているかを調査した。

70)"A Qualitative Experiment to Analyze Microbial Activity in Topsoil Using Paper and a HandmadeReflection Photometer", Journal of Chemical Education, 84, pp.1689-1690(2007) (アグベコ・ジュリアス・コフィの修論の一部を投稿したもの)

コピー紙にふくまれるデンプン量をヨウ素デンプン反応でしらべることにより土壌中の微生物量を推定する新しい分析法を提案した。

71)"New Analytical Method for the determination of Detergent Cocentration in Water by Fabric Dyeing", Journal of Chemical Education, 84, pp.1803-1805(2007)(セット・セインの修論の一部を投稿したもの)

アクリル繊維を有害な有機溶媒の代わりに用いる新しい合成洗剤量の分析方法を提案した。70, 71ともアメリカ化学会のジャーナルであったため,米国,ドイツ,フランスなどからといあわせが多く寄せられている。

72)"Supporting Teachers to Educate Marginalized Children: Teachers and Teacher Education in Afghanistan", Journal of International Cooperation in Education, 10, pp.71-88(2007)

2004年から行っているJICAアフガニスタン教師強化プロジェクトの中で行ったもので,そのうち喜多は生活科や算数の授業評価法にかんするルーブリックを開発し,実際にアフガン教育省と共同で授業評価を行った。

73)"Evaluating Project Impact: The Case of MSSI in South Africa", pp. 322-336, in M. Nagao et al. edited "Mathematics and Sicence Education in Developing Countries", The University of the Philippines Press.(2007)

1999年より行ったJICA南アフリカ共和国ムプマランガ州理数科教員再訓練計画において,理科の授業研究や指導案の書き方の変化に基づきプロジェクトの評価を行った。

74)”国際教育協力における「授業研究」の有効性ー南アフリカ人教師における生物の授業を事例としてー”,教育実践学論集,8,pp.11-21(2007)

73と同じJICAプロジェクトにおける授業研究に関するもの。