※main.htmlにいれる見出し ■ 「Theマイクロステップ技術で覚える英単語」を使った麻布高校での実験の結果

【麻布高校における実験と結果の概要】
 平成20年11月〜平成21年2月、私立麻布高等学校において、学校の許可と保護者の同意を得て長期の学習実験を実施しました。  一番の目的は、実用レベルに上がってきた最先端の学習効果測定技術(マイクロステップ計測技術)の有用性を評価することにありました。 ○実験参加者:  英語教諭(岩佐先生)に御協力いただき、1年生のうち任天堂DSを持っている生徒さんを対象に、英単語学習実験への参加を募ったところ、50名を超える希望者がありました。最終的に、そのうちの46名が実験に参加していただきました。 ○利用した英単語学習ソフト 「THEマイクロステップ技術で覚える英単語(D3Publisher)」  学術的に、最先端の学習効果測定技術を、研究者主導で導入した任天堂DS専用の英単語学習ソフト
麻布高校生が学習で利用した任天堂DS用英単語学習ソフト

麻布高校生が学習で利用した任天堂DS用英単語学習ソフト


○実験の目的  目的はいくつかありました。ここで紹介できる研究目的は次の3点です。 (1)新技術により初めて測定できるようになった、【実力】レベルの学習効果の積み重ねを、個別に描き出せることの確認(追試)。 (2)個人の到達度の時系列変化データから、平均データを算出し、実験に参加した麻布高校の生徒が、どのようなペースで英単語を実力レベルで習得していくのかを明らかにする。(3)新技術により初めて実装された機能が、学習者の学習意欲向上に効果を持ったか否か。 このソフトでは、新機能の効用を実感するためには50日程度学習を継続することが必要となっています。分析の結果、50日以上学習を継続した生徒20名中16名がこのソフトを使って英単語の学習を続けたいと評価し、学習期間が長い生徒ほどこのソフトを使って学習を継続したいという意識が高いという結果が得られました。従来の学習ソフトは、学習を継続させることが難しいとよく言われます。今回の実験で、その問題を新たな切り口で解決できる可能性が示されました。また、一般の高校において個別の客観データに基づく質の高い自主学習を提供きることが示されました。  今後は、質の高い自主学習を一般の高校生に提供し語彙力を実質的に上げることで、語彙の獲得レベルが英語力全般にどのような効果を持つのか等を検討する予定です。対象とする高校を、次回は岡山を中心に募集しようと考えています。
2008年度の麻布高校の実験で収集された学習者のグラフのサンプル

図 麻布高校の実験で収集されたグラフ例


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◆研究者主導で開発された最先端の学習ソフト
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★マイクロステップ技術は、学習効果を厳密に測定する心理学の新しい実験計画法と、それをコンピューター等に実装するための新しい測定技術で、その中核となる【スケジューリング技術】は、世界レベルでこれまでにない、全く新しい、日本発のオリジナルな技術です。科学研究費補助金など、数千万円を超える助成を国から受け、10年来の基礎研究を経てようやく実用レベルに上がってきた技術です。

★「THE マイクロステップ技術で覚える英単語」は、それら学術研究の成果を速やかに社会に還元することを意図し、【研究者主導】で開発されたソフトです。一般に市販されている学習ソフトとは、確実に一線を画す、これまでにない新しい機能が導入されています。

★最新の学術研究の成果がこれほど早く、一般の商品として市販されたのは、発売元のD3Publisher(D3P)さんのご理解と、D3Pさんへの(株)リクルートの橋渡しがあったからです(Q&Aを参照してください)。

★学習院大学の太田信夫教授と寺澤で、スケジューリングの監修をしています(監修料はいただいておりません)。

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◆世界最高レベルの測定精度を誇る測定ツール
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★これまで不可能であった測定を可能にしています
 このソフトの最大の特徴は、一夜漬け的な学習効果を排除して、学習者個人の実力(到達度)レベルを時系列変化として非常に高い精度で描き出せる点です。携帯ゲーム端末用のソフトですが、学術的にも、現段階で世界最高レベルの測定精度を誇る測定ツールであることは保障できます。現時点で、日々の学習に対応し個人の実力レベルの到達度の時系列変化を描き出している研究はありません。

★日々の学習効果は自覚できないレベルで積み上がっています
 マイクロステップ計測技術は、従来測定できなかった、学習者の実力(潜在記憶)レベルの到達度の時系列変化を、個人ごと、また学習内容の一つひとつについて、客観的に描き出すことを可能にしました。一生懸命覚えても、すぐ忘れてしまうと思われている学習の効果が、実は、自覚できないレベルで、確実に積みあがっていることを、客観的なデータとして学習者に個別にフィードバックすることを可能にしました。意味がないと感じるような日々の学習が、確実に自分の成績を向上させていく様子がフィードバックされると、学習意欲は確実に高まります(それを示すデータが、小中学校の長期学習実験や不登校児童生徒の学習支援などで得られ始めています)。

★これから様々な事実が明らかになっていくはずです
 実際にこのソフトを学術研究に活用し、これまでにない興味深い知見も出始めています(2009年度日本心理学会で麻布高校の実験結果を報告する他、ワークショップで話題提供を行う予定です)。今後、新しい事実が数多く報告できると思います。

 →2007年日本テスト学会大会発表論文抄録集原稿
 →2009年日本心理学会大会発表予定原稿

★網羅的な学習を提供します
 このソフトでは、全ての英単語を網羅し、個々の英単語ごとに学習やテストスケジュールを制御しているので、個々の英単語ごとに実力レベルの到達度を時系列データから推定することが可能になっています。実力レベルになったと客観的に判断された単語は、オボエ単語として学習対象から抜けていきますが、オボエ単語の増加は、皆さんが英語を学習していく上で、(ゲーム的架空の武器やパワーではなく)実質的なパワーが増強されることを意味しています。

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今後の研究の展開について
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★高校や大学、塾などでの実践研究
 英単語の学習は、これまで完全に学習者に任されていました。学習者がどのくらい学習をし、どの程度の語彙レベルになっているのかを教師などが把握することはできませんでした。それに対して、このソフトで描き出されるグラフを見れば、どの生徒がどの程度学習をし、語彙レベルがどの程度になっているのかは一目瞭然です。現在、高等学校、大学、塾などを単位として、このソフトの学習データを大規模に集約し、平均データを出力するシステムを開発中です。DSのソフトは自主学習には最適なシステムですが、多少、ペースメーカー的に、教師などが学習を促す指導を入れるなど、多少のストレスを加えた方が、学生にはメリットが大きいと思います(麻布高校の岩佐教諭や岡大生の助言を参考にしています)。21〜22年度、活用を申し出ていただいている大学研究者と、若干の高校(学年単位かクラス単位)を募り、実質的に語彙力アップを目的とする学習実験を始める予定です(DS本体を生徒全員が利用できる環境があれば、実質的に学校規模で語彙力をあげる実践もできると考えています)。これまでの研究知見を見る限り、このソフトを長期に利用できる状況を作れば、学習者にも、教師にも、大きなメリットを提供できると考えています。

★「やればできるようになる」ことを実感できる小中学校におけるドリル学習支援
 マイクロステップ技術を用いた研究で、最大の研究フィールドは、小中学校における、オリジナルな印刷教材や、e-learningシステムを用いた学習支援にあります。平成19年度より、小学校の漢字や中学校の教科書の英単語をコンテンツにスケジューリングを施した独自のドリル教材を作成し、全校規模の学習支援を小中学校で展開し始め、21年度は岡山と京都で1000人を予定しています。また、不登校児童生徒の学習支援と意欲向上を目的とし、e-learningと地元支援者の支援をかみ合わせた、ユニークな実践も進めています(保健師さんとの共同研究が、学会から賞をいただきました。また、岡山市の教育委員会からの正式な依頼で、不登校児童生徒の学習支援を21年度導入します)。
 →第6回日本認知心理学会優秀発表賞「社会的貢献度評価部門」受賞のページ

★学校に提供する印刷教材を新しい教育メディアとする実践
 マイクロステップ計測技術を一般の学校で導入する学習支援に対しては、あまりオープンにしてきませんでした。オープンにできなかった理由は、支援の実施にドリル教材の印刷経費の捻出が難しかったためです。岡山大学の重点研究の採択を受け、毎日使うドリル帳に企業や個人から寄せていただくメッセージや広告を掲載し、その寄付や広告費を大学に入れることにより、印刷やデータの読み取りの費用をまかなうスキームを21年度後半より、試験的に開始する予定です。その広告は、単なる広告でなく、地域の子どもたちの学習を実質的に支援する色合いを持ちます。さらにまた、私たち大人が、幼少の頃から受け継いできた大切な思いを、次世代を担う子どもたちに直接つなげる新しい教育メディアとしていくことを目指しています。社会的に価値のある行動をされている企業や個人は多くありますが、その思いは次の世代を担う子どもたちにダイレクトには伝えられていません。現在子どもが手にする情報は、学校の学習内容かテレビやインターネットで手に入る情報に限定されています。マイクロステップ学習支援を財政的に自立させることをかねて、新しい情報のルートを構築できると考えています。当面、1000〜2000名の児童生徒を対象として限定して支援を進めながら、広告費で学習支援の経費をまかなえるモデルを構築していこうと考えています。

★様々な方々からメッセージをお寄せいただいています。
 ドリル教材を新たな教育メディアとして活用していくプロジェクトを、マイクロステップ研究会という研究会を主催して進めています。その活動には、高嶋哲夫さん、advantage Lucy(アドバンテージ ルーシー)さんやセロファンの西池さん、枝廣淳子さん、つやまあきひこさん、前田憲男さん...などから支援の表明や具体的なメッセージをいただいています。

★広告効果の科学的測定とノウハウの蓄積  上記、教育メディアを構築していくことと連動させ、広告効果を厳密に測定・評価していく研究を22年度から立ち上げる予定です。マイクロステップのスケジューリング技術は、広告の提示スケジュールを科学的に厳密に検討することを可能にしますので、その効果測定と絡めて行く予定です。各企業の広告は、どのようなペースで、どのように提供すると効果的であるのかを測定し、その結果を企業に提供するサービスをたちあげようと考えています。マイクロステップのスケジューリング原理は学習に特化されるものではありません(→学術的な説明を参照:20,21年度の岡山大学の重点研究として採択されています)。

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マイクロステップ計測技術に関する資料
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 マイクロステップ計測技術に関する、一般の方向けの資料はまだあまりありませんが、次の資料をご参照下さい。

・放送大学 '08 記憶の心理学 第8回の映像教材(2011年度まで放映予定)

・太田信夫(編) 『記憶の心理学』 放送大学教育振興会(第8章 記憶と学習:pp.120-133, 2008年)

・寺澤孝文・太田信夫・吉田哲也(編著) マイクロステップ計測法による英単語学習の個人差の測定 風間書房, 2007年(科学研究費補助金により出版されたかなり専門的な本です)

・太田信夫(編)『記憶の心理学と現代社会』,有斐閣(第4部第4章 自覚できない到達度を描き出す e-Lerning,pp.187-205. 2006年)

・森 敏昭(編著)『認知心理学を語る@ おもしろ記憶のラボラトリー』 北大路書房(第5章 記憶と意識−どんな経験も影響はずっと残る−:pp.101-124,2001年)

★一般向けに本(培風館)を執筆中です

★授業で使っている、マイクロステップ計測技術に関するパワーポイントの資料などを公開しています。Linkを参照してください。