「THE マイクロステップ技術で覚える英単語」を購入する前に


  • 普通のゲームソフトとは違います

    このソフトは、試しにちょっとだけ使ってみようという方には、お勧めできません。最初の10日間は新技術(マイクロステップ計測技術)によるメリットをお手軽に実感できるようにしていますが、真のメリットを実感できるようになるためには、ある程度学習を継続してもらう必要があります(最低30日?)。麻布高校の実験でも学習を50日継続した生徒さんは、「このソフトを使って勉強を続けていきたい」と、こちらで想定していた以上に高い評価をいただいていますが、一般のゲーム的学習ソフトのように、意外性や面白さといった要素はデータ容量を確保するためだいぶ犠牲にされていますので、従来のようなゲーム的な面白さを期待されて学習を始めると、すぐに飽きてしまうかもしれません。

    発音も出力されません(発音記号は表示されます)ので、発音記号が読めたり、発音の予想がつけられる程度の語彙力がついた高校生以上でないと学習はつらいと思います。

    このソフトは、完全に個人に特化した英単語学習を、長期にわたって進めていく場合に、大きなメリットがありますが、たった一人で長い学習を続けていくことはやはり難しいことです。麻布高校の先生からも同様の助言を受けましたが、高校や塾や大学の先生が、ペースメーカーになったり学習状況を確認できる方が、学習者にはメリットが大きいと思います。グループをつくり、他の人の学習段階を確認しあいながら励みにすることもよいと思います(ソフトに出てくる英単語の学習条件は、人によって違ってくるように設計してあります)。 いずれにしても、このソフトは本気で学習をしようとする人には、確実にメリットを提供できると思います。逆に、ゲーム的面白さを期待して、試しに使ってみる方には、あまりお勧めできません。


  • 入手方法について

    ソフトは、一般のゲーム店や電気店など店頭では、既に手に入らないようになっています(ゲームソフトは、書籍と違い、売れても補充されない販売形態をとっているそうです)。購入を考えの方は、お店でご注文いただかなければ入手できないそうです。なお、Amazonでは購入できます。


  • 収録されている英単語について

    スケジューリングされている英単語は、「ターゲット」や「速読英単語」9冊の単語本のデータを入力し、3冊以上で重複する単語を特定し、さらにそれについて全国13の国立大学の大学1、2年生を対象にして、学術的に裏づけのある手の込んだ調査を実施し、そのデータに基づき、英単語の難易度ランクを作っています。さらに、TOEICの得点との対応もとれていることも、事後的に確認されました。→ソフトのQ&A参照)。高校生はもちろん、TOEIC受験の大学生や社会人にも有効です。ただし、単語の自主学習は支援できますが、読解やリスニングなどには不十分です(当然ですが)。


  • 暗記学習を推奨するソフトではありません!

    このソフトは、機械的な暗記学習を推奨しているわけではありません。現在、提唱されている様々な学習法の有効性は、まだ、潜在記憶レベルでは一切検証されていないため、最もオーソドックスな単語カード的な学習法を採用しているに過ぎません。実力レベルでは、どのような学習法が、また、どのような学習スケジュールが有効であるのかを比較検討していく研究は、これまで全くなされていないことに御理解ください。まさにこれから始まるものです。


  • 覚えようとしなくてもいい!?

    学習は、一生懸命覚えようと考えず、サクサク進めていってください。それでも実力は上がっていきます。麻布高校の生徒さんのコメントに「ただ英単語を4段階で判定して、それを“見流す”だけでもずい分と単語がわかるようになることに感心した。というよりは驚きました。」があります。潜在記憶研究でも、一夜漬け的な記憶成績に大きな影響を持つ、「覚えようという意図(記銘意図といいます)」の有無が、実力レベルの記憶成績には影響しないことが示されています。


  • 実力は短期間では決して上がらない

    実力(潜在記憶)レベルの語彙力は、短期間では決して上がらないと考えてください。一夜漬け的な記憶(顕在記憶)が使える状況であれば、成績は比較的早く上がりますが、学習から時間が経過しても残っている実力レベルで語彙力を高めるためには、310個の英単語を覚えるだけでも(1日10分弱の学習で)平均して、4ヶ月から半年程度の時間がかかると考えたほうがよいと考えられます(かなり個人差があります)。このような実力(潜在記憶)レベルの語彙の定着プロセスの測定は、学術研究でも、マイクロステップ計測技術で初めて可能になったものです。習得に要する時間に関しては、様々な報告がありますが、それらは、全て顕在記憶(一夜漬けの学習効果)の影響が色濃く出ている状態で測定されているものばかりといえます。実力レベルの変化を厳密に推定することは、これまで不可能だったことを理解してください。

    ※(余談)2007年度の全国英語教育学会のシンポジウムで、記憶研究者を代表して学習院大学の太田先生(筑波大学名誉教授)と寺澤が招待され話題提供を行いました。そこで、意味記憶が基盤となる語彙習得過程を検討するためには、潜在記憶レベルの学習プロセスを検討しなければいけないが、現在なされている語彙習得に関する研究は、顕在記憶課題を用いた研究が多いこと。今後、潜在記憶ベースの研究が増えなければいけないということに説明を加えました。その懇親会や別の学会で、何度か、若手の優秀な英語教育の研究者から「潜在記憶(実力レベルの語彙力)を測定すること自体が難しいため、研究ができない」といった切実な声をいただきました。

    実際、記憶研究でも難しかった測定を行うことは困難なことです。そこで、このソフトを研究者が容易に研究利用できる状況を作ろうとしています。このソフトには、学習者の詳細で膨大な学習データが記録されるようになっていますが、個人利用を想定しているため、他者のデータを集約する機能は持ちません(研究用のe-learningシステムは出来上がっています)。しかし、画面表示されるグラフは、かなり精度の高いデータですので、その画像データをデジカメで撮影し、メールで回収し、画像解析を行い、数値化し、その平均を集約することは可能です。その一連の処理を自動化するしくみを現在開発しています。それを使って、21年度後期は、研究者(高校や塾の先生も)が、集約されたデータを使って、様々な学習法の効果を厳密に検討できるようにしたいと考えています。今後、様々な学習法の効果を比較検討し、さらに詳細な予測を報告できると考えています。ご関心のある方は、コンタクトをとっていただけると幸いです。


  • TOEICの学習にも有効

    TOEICの得点が800点超の方(東大卒のバリバリのビジネスマン)でのSSランクの成績のグラフが、「THE マイクロステップ技術で覚える英単語 画像掲示板」に掲載されています。SやSSランクになると、だいぶ難しい英単語が含まれています。しかし、発音は出力されません(発音記号は表示されます)ので、発音記号が読めたり、発音の予想がつけられる程度の語彙力がついた高校生以上でないと学習はつらいと思います。


  • 実力(潜在記憶)は加齢の影響を受けにくい

    実力レベルで蓄積されていく記憶(潜在記憶)には、一般的な【加齢】の効果が現れにくいことが学術的に明らかになっています。ですから、高齢者の方も、学生さんと同様に、英単語の実力は上がっていくことが予想されます(実際に、年配の方に学習をしていただき、そのデータを、「THE マイクロステップ技術で覚える英単語 画像掲示板」にアップしていただくと、他の方々の励みにもなりますので、是非お願いしたいと思います。ただし、文字の表示などは、高齢者のために配慮されていません。また、到達度の変化には、大きな個人差があることも分かっています。自分のペースで、着実に学習を進めていっていただきたいと思います。

寺澤研究室について

寺澤研究室は平成29年度現在、学部生7名、修士2名、博士(連大)1名で「学習や記憶」「新たな教育評価」「縦断的ビッグデータ」に関する研究を行っています。
寺澤研究室の紹介

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