持続可能な低炭素社会
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内容紹介 ●「序文」より 人類が,水の惑星ともいわれる美しい地球を,初めて宇宙から観てから50年が経った。その美しいはずの地球は,人口増加による食糧問題,急激な工業化にともなう水質・大気汚染の顕在化,それに化石燃料などの大量消費によるエネルギー危機など,人間活動により,地球環境の劣化をもたらしてきている。 特に,化石燃料の利用拡大にともなって発生する炭酸ガスは,地球温暖化という地球規模の環境に大きな影響を及ぼすとともに,我々人類の持続的な発展を阻害することにもなる。これまで,大量の化石燃料などを消費してきた我々先進国の責任はきわめて大きいといえる。 本学は2006年,「持続可能な開発」国際戦略本部を設置し,人類のサステナビリティ達成に向けた教育研究を積極的に推進してきた。2008年7月,北海道の洞爺湖において,先進国首脳会議(G8サミット)が開催された折,本学においても,その前後4週間をサステナビリティ・ウィークスと定め,約40のサステナビリティに関する国際シンポジウムやフォーラム,それに市民向けの公開講座を実施した。そのなかで,大学院共通講義として,「持続可能な低炭素社会」を設け,一般の方々も巻き込んだ対話型の講義を実施したが,それをまとめたものが本書である。内容は,環境劣化・地球温暖化といった基本的な環境変化のメカニズムから始まり,続いて,環境経済学や国際環境法といった立場から,低炭素社会に向けての制度論を展開し,最後に低炭素社会の実現に向けての新たな技術開発の現状と近い将来,世界最大の炭酸ガス排出国となるであろう中国の取り組みについて述べていて,国,地方そして我々個人,それぞれのレベルで低炭素社会の実現を考える指標を与えている。わが国を代表する研究者により執筆された本書が多くの方々に読まれるとともに,わが国の低炭素社会への認識が高まり,移行のスピードが早まることを期待する。 2009.1.13 北海道大学総長・佐伯 浩