岡山大学大学院教育学研究科・教育学部ESD協働推進センター

2026年度 ユネスコスクール・ESD 研修会 兼 ネットワーク顧問会議

お知らせ

2026年3月5日(木)、2026年度 岡山県ユネスコスクール高等学校ネットワーク ユネスコスクール・ESD 研修会 兼 ネットワーク顧問会議を行いました。

1. 開会(14:00)

柴川より開会の挨拶および本研修会の趣旨説明。

2. ESD・ユネスコスクール研修会(14:05〜15:00)

研修 1:岡山県立邑久高等学校 横溝 俊 先生

「イエナプラン教育研究をいかに現場・探究活動に還元するか」

(1)講演の位置づけと問題意識

横溝先生より、邑久高校での探究活動の実践と、イエナプラン教育の理論を現場にどう還元するかについて報告があった。「オンラインでも学べる時代に、なぜ学校に来て学ぶ必要があるのかを問わなければならない」との問題提起があり、理論と実践を組み合わせることで教育実践が深まるとの見解が示された。

(2)探究活動の現状と課題

邑久高校では約 10 年間、探究活動を継続してきた。横溝先生は国語科の教員として探究に関わっており、探究の時間だけでなく国語の授業(対話の論理・平田オリザ氏の教材等)を通じて対話の理論を学ばせた上で実践につなげているとの説明があった。
一方、「生徒主体と言いながら教え込んでしまう」教員の指導性の問題が現場で繰り返し起きていることが課題として挙げられた。具体例として、クラスごとの自立的な活動を計画していたところ、一昨日の教員間の話し合いで「生徒に任せるのは大変だから」として生徒の意見を聞かないまま全クラス統一の行事に変更されたという出来事が紹介され、「それが本当に教育的な意図のある活動なのかを問わなければいけない」との言及があった。

(3)「本物に触れる」実践の具体例

「本物に触れることで生徒は大きく変容する」との説明があり、以下の 2 つの具体的な実践が紹介された。

① 葉っぱを使った問い立てのワークショップ

生徒が問いを見つけられず探究が進まない状況が続いたことをきっかけに考案した実践。雨の中 40枚の葉っぱを集め、机の上に置き 5 分間観察させた。その後、「葉っぱ×自分の探究分野」で問いを作るワークショップを実施したところ、以下のような多様な問いが生まれた。

「歴史と葉っぱにはどのような関係があるか(家紋との繋がり)」
「パピルスはどのように作られたのか」
「葉っぱの落ちる速度は一定なのか」
「漢方薬として使われる葉っぱの効能は本当にあるか」「病院の観葉植物に癒し効果は本当にあるか」
「サッカー・ラグビーのボールの跳ね方に芝と土の違いはあるか」

☜「問いをいきなり作らせるのではなく、本物に触れさせ、思考を鍛えることが重要だ」との見解が示された。

② 解体新書初版本の見学

医療に関心を持つ生徒グループが校近くの資料館を訪れ、4500 万円の価値を持つ解体新書の初版本を実際に見た。本物を前にした生徒の表情が授業中とは全く異なるものになったことが写真とともに紹介された。また、見学に同行した他教科の教員も生徒そっちのけで夢中になっており、「探究を深めるには先生をどう巻き込むかが重要だ」との言及があった。

(4)4 つのこころ

「スキルの習得ではなく心を育てる」という方針のもと、探究活動を通じて育てたい 4 つの「こころ」として以下が挙げられた(名称は横溝先生の使用した言葉のとおり)。

⚫ 協力しようとするこころ

⚫ 行動しようとするこころ

⚫ 楽しもうとするこころ

⚫ 深ぼろうとするこころ

(5)ルーブリック評価

愛媛大学が開発した課題研究ルーブリックを参照しながら、対話の要素や 1 時間の計画性を加えた自校版ルーブリックを現在開発中とのことであった。「大学生向けのルーブリックをそのまま使うのではなく、高校生の探究に合わせた改変が必要だ」との説明があった。

(6)探究推進室(探究ラボ)の設置

使っていなかった部屋にモニターや机を配置し、グループワークがしやすい環境を整えた「探究ラボ」を前日に完成させたとの報告があった。また、次年度から「探究推進室」を正式に立ち上げる予定であるとの説明があった。

(7)まとめ

教育実践を深めるために必要なこととして、以下の 4 点が挙げられた。

1: 理論に裏打ちされた実践
2: 教育をコーディネートしていく仕組み
3: 生徒と教師の関係性の結び直し
4: 教員の意識・マインドの変革

(8)質疑応答

Q(参加者): 図書館を使った授業展開はされているか?

A(横溝先生): 探究ラボと図書館の連携は現在考えているところ。生徒が論文を読んでも分からないことが出てきて書籍に向かうというプロセスが自然に生まれてきており、本物に触れることが逆に本への関心につながっている可能性もある。

Q(参加者): ICT やタブレットは「本物」と捉えてよいか。オンラインでもできることをわざわざ学校でやる意味との関係をどう考えるか。

A(横溝先生): ICT 技術を使いながら本物の専門家とつながるなど、技術を活用して本物に触れさせることが大事。AI が言っていることは本当かどうか定かではないことが多く、深めるほど本物に近づかなければならないと生徒自身が気づいていく。

研修 2:ポートランド州立大学 カリン・ティテルバック氏(オンライン)

「ポートランド州立大学のサステナビリティ・SDGs&サービス・ラーニング」
Karin 氏からはポートランドの特色、PSU がオファーするプログラムの実際の様子や写真・動画などを共有頂いた。質疑応答の中で、英語のレベルは全く関係なく、初心者でも上級者でもいずれでも学べる内容であることが補足された。

3. ネットワーク顧問会議(15:15〜16:00)

各校から出た意見を順不同で記録する。

論点 1:年間テーマの扱いについて

⚫ 学校の取組みと離れたテーマに決まった場合、顧問・学校の負担が大きくなる。テーマの廃止も選

択肢として考えられる。

⚫ 「共通テーマ+自校テーマのハイブリッド型」が望ましいとの意見があった。学校の実態に合わせ

て選択できる柔軟な仕組みが取り組みやすい。

⚫ ESD という大きなテーマのみとする案も出された。

⚫ 「交流」に意義を感じている学校が多く、引き続き交流会を機能させることへの期待が示された。

⚫ 「2 カ年サイクル型」の提案があった。1 年目に広く学び、2 年目に深掘りする形で、2 年間で 1 つ

のテーマを扱う。

論点 2:学びを単発で終わらせない仕組みについて

⚫ ユネスコ部や有志団体の活動を学校全体に広げるための仕組みを考えていきたいとの意見があっ

た。

⚫ ニューズレターを学校の HP に掲載するような取組が提案された。

⚫ 各校のユネスコ活動を知ることができる交流会の開催が望まれた。

⚫ 各校の企画に他校の生徒が参加できる機会があるとネットワークがより有意義になるとの意見があ

った。

⚫ 参加していない学校も巻き込める活動があればさらに良いとの意見が出た。

⚫ 現状の「引率のみ」状態ではもったいないとして、教員も学びの中に参加できる形が望ましいとの

意見があった。

⚫ 大学生や大学教員が高校生の発表に対して賞を与える仕組みがあると、高校生の進路に繋げられる

との提案があった。

論点 3:運営体制と業務分担の見直しについて

⚫ 柴川先生と大学生スタッフへの準備・運営の依存が大きすぎるのではないかとの意見があった。高

校側がより主体性を持つべきとの声も出た。

⚫ 転勤が多い公立高校では顧問の変動率が高く、長期的に安定した運営が難しいこと、また教員の負

担感も課題として挙げられた。

⚫ 一方、大学側のミッションとして県ユネスコスクールネットワークを支えるという役割があり、アンカーとしての大学の関与は引き続き重要との意見も出た。

4. その他連絡事項

事前学習会や実践交流会の日程の調整、その確認について主に議論された。

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