岡山大学大学院教育学研究科・教育学部ESD協働推進センター

【報告 -Day 1】国際ワークショップを開催しました DAY 1

 この度、国際イスラミック大学マレーシア(IIUM)のイリナ・サフィトリ・ゼン先生を迎え、国際ワークショップ「ESD岡山モデルの再訪」を開催しました。
 初日は京山公民館でのクラブ活動「フレンドリー京山」を視察し、主催者や参加者とディスカッションを行いました。
 野草茶の専門知識を持つ講師を招いて、野草茶を楽しみながら参加者の体の不調などの悩みを聞いたり、野草の生えている場所や効果などを踏まえながら、効能について教えて頂きました。参加者は若者から高齢者、そして日本人から様々な国にルーツを持つ住民ら、本当に多様でした。薬学と野草、自然界の専門知識を持つ講師がそれを市民の生活上の悩みに即して分かりやすく伝える。参加者たちは自らの悩みを分かち合い、お互いを暖かく受け入れ、より良い生活を送るための知恵を得る。このような知識の転換の場に感銘を受けました。

 午後は、岡山大学にて講演を行いました。「ESDの新たな指標としての5重らせんレンズ」と題し、これまでの研究成果を発表しました。参加者は主に本学の教員、岡山市のESDにその黎明期から関わってきた方々や、大学院生らでした。発表の後の質疑応答では、

1)ESDは教育運動だと考える。運動であれば、それは誰かに強制されてすることではなく、本来はひとりひとりの自由意志で関心ある人がそれぞれで参加するもの。通常であれば、運動への参加を行政が推し進めることはしない。仮にそうした場合、反発が起きることもある。しかし岡山市ではこの運動を、学校教育と社会教育の方針に据え、officialなものとしてきた。実はそのことに価値や意義があるのではないだろうか。


2)ESDを実践したから今の岡山市が持続可能になった、人が育った、と単純にまとめることはできないのではないか。「ESDの岡山モデル」とは、元々ESDより以前に点在していた様々な持続可能な開発への取り組みという土壌があったが、それらを繋ぎ、そこに水を通していくパイプを作ってきたという取り組み。重要なことは、その水の流れを止めないよう、誰かが熱意を持ってしっかりと水を管理していかなければいけない。その誰か、が今や一体誰なのかが分からない。そこをどう考えるか。

といった議論が展開されました。

私たちはここで頂いた論点と視点を踏まえ、ESD岡山モデルの実態とその課題、改善に向けての方策について更に研究を深めていかなければならないと考えます。

5重螺旋レンズ(Carayannis & Campbell, 2010) では、社会の5つのサブシステムの間で知識が交換され、共創されることに焦点が置かれていますが、EUではその持続に苦戦しているという経緯があります。それに対するひとつの新たな提案として、生涯学習の観点より、「システム」を動かすー”水を流す”のは他ならぬ私たちひとりひとりの生身の「人間」であり、人々の小さな変容がシステム間の相互作用に対して大きな影響力を与えていることに着目します。そして、真の意味で変容的な学習の場をもたらしていくために、教育機関・教育者には何が必要かを考えていきたいと思います。

参加者の皆さま、本当にありがとうございました。

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